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BBS FL|新素材「フォルテガ」を使った鍛造ホイールがいよいよデビュー。

BBSジャパンが、構想から10年以上をかけて独自に開発した新素材が「フォルテガ」である。アルミニウムは軽さに優れ、アルミ合金の一種である超超ジュラルミンは強度に優れているが、フォルテガは、外部からの力に対して変形しにくく、元の形状を維持しやすいという特性を持つ。

 開発の背景には、来るべきBEV時代を見据え、重量級の体躯を足元から支える耐荷重性能に、走りの魅力を底上げする剛性と軽量性を併せ持ち、さらにBBSらしい美しい造形のホイールを作る。そのためには、新素材が必要と判断されたのである。

加えて、現在のトレンドである背の高いSUVや大径ホイールにもメリットがある。つまり、ホイールにかかる荷重が大きくなり、ホイールがしなりやすい状況でも、姿勢を適切に保持し、コーナリング時の安定性を向上させるのが特徴である。

 今年の東京オートサロンでは、フォルテガ鍛造1ピース「FL」がお披露目された。ポルシェ タイカン4クロスツーリスモに装着されていたのは、フロント21×9.5J、リア21×11.5J。4月1日より通常受注の受付が始まる。また、BMW iX3には参考出品としてフロント21×9.0J、リア21×10.0Jが装着されていた。

 東京オートサロンでの発表に先駆けて、メディア向けの試乗が行われた。THE MAGARIGAWA CLUBを舞台に、純正ホイールとフォルテガ鍛造の試作品ホイールをiX3に履かせて、比較することができた。1周目は純正ホイールで、2周目はフォルテガ鍛造で走行した。

 とてもじゃないが、iX3はTHE MAGARIGAWA CLUBのハイスピードかつツイスティなコースを走る車ではないと思った。そして、先導車はまさかのフェアレディZだった。こちらはBEVで、ストレートでは圧倒的な加速力を見せ、また、回生ブレーキとフットブレーキの掛け合わせにより制動力は高い。しかし、ターンイン時にコーナーへ向けてハンドルを切ると車体が大きく傾き、アンダーステアでズルズルと外に押し出されてしまう。右へ左へと切り返すセクションでも、あっという間にタイヤが音を上げるため、よほど慎重に丁寧に、そして速度をできるだけ落とさなければ、途端に車が破綻してしまう。コーナリング中は「うわー」や「ひえー」と、何度も情けない声を上げながら、なんとか1周を走り切った。

 2周目は、いよいよフォルテガ鍛造の試作品を履いてスタート。コースインする前のピットロードで少し転がしただけで違いは明確だった。とにかく車が軽い。動き始めたところからスーッと走り出す感覚があり、あれほど鈍重だった車体が、1枚も2枚も重たい鋼鉄の上着を脱いだかのように軽やかになった。もちろん同じiX3だ。タイヤはむしろ20インチから21インチにサイズアップしており、それでもホイールがフォルテガ鍛造になったことで、1本あたり約6kgは軽くなっているという。

 特にコーナリングでは、その違いが顕著に現れた。ターンインする際の車の反応はとても素直で、車体が重みで大きく傾く挙動も抑えられ、アンダーステアにもなりにくい。先ほどと比べて明らかに、コーナリング中のボトムスピードを上げることができた。

 2周目は、BRZが先導車で、インストラクターも先ほどより控えめに走ってくれたとはいえ、BRZの背後にぴたりとついていけるほどコーナリングでの操縦性が向上しており、何より、私自身が気持ちよく楽しく走れた。また、路面の凹凸も、よりスムーズにいなせるようになっており、「これは一般道でも乗り心地が良さそうだ」と感じた。

 フォルテガは、これからのBEV時代に、ドライビングの楽しさと安心感を両立する可能性を秘めている。


写真=中島仁菜/小林邦寿 文=伊藤 梓 問い合わせ=BBSジャパン 03-6402-4090 https://bbs-japan.co.jp

初出:『MOTORIST vol.4』(2025年3月31日発売)
※内容は発売当時のものです。掲載にあたり一部加筆修正をおこなっています。

純正のMスポーツホイールより1インチアップとなるフォルテガ鍛造の試作品ホイールを試乗。タイヤは、アドバンスポーツV107(フロント245/40、リア275/35)が装着されていた。

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