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2025 SUPER GT公式テスト|王者の速さと混戦の兆し、テスト走行で見えた戦力図。

2025年の「AUTOBACS SUPER GT」は、4月12〜13日に岡山県・岡山国際サーキットで開幕する。高性能GTカーをベースとしたレーシングマシンがしのぎを削るこのシリーズは、国内モータースポーツの中でも圧倒的な人気を誇っている。GT500に15台、GT300に28台。総勢43台のエントリーが発表され、すでに火花は散り始めている。

同シリーズの歴史は、1994年に始まった「全日本GT選手権」にさかのぼる。現「SUPER GT」は、自動車メーカーが市販する高性能GTカーをベースに開発されたマシンによって争われるカテゴリーだ。GT500ではトヨタ、ホンダ、ニッサンの国内3大メーカーが競い合い、GT300ではランボルギーニ、フェラーリ、メルセデス、ポルシェなど、国内外の多様なブランドがしのぎを削る。

タイヤ戦争もまた、SUPER GTの醍醐味のひとつだ。ブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュランといった有力メーカーが名を連ね、各チームが最適な一本を巡って熾烈な開発競争を繰り広げている。なかにはタイヤを交換せずに走りきる“無交換作戦”を遂行する陣営もあり、レース展開に大胆な変化をもたらすこともある。
タイヤは単なる“消耗品”ではなく、レースの勝敗を左右する戦略の要である。

2025年シーズンでは、予選方式もアップデートされる。昨年は「タイム合算方式」が採用され、Q1・Q2を異なるドライバーが同一セットのタイヤで走行する総力戦スタイルが話題を呼んだが、今季は「ノックアウト方式」が復活。GT500は上位10台、GT300は18台がQ1からQ2へと駒を進める。
息をのむ上位進出争いが戻ってきたことで、予選は一瞬たりとも目が離せない緊張感に包まれるはずだ。

ドライバー陣も豪華だ。F1やWEC(世界耐久選手権)など世界を知る経験豊富なベテランから、国内トップカテゴリーで名を上げた実力派まで、多士済々。サーキットでは、チームカラーに身を包んだファンが熱狂的な声援を送る光景が恒例となっており、その熱気はグランドスタンドにもピット裏にも満ちている。

今季は、岡山を皮切りに、富士、鈴鹿、スポーツランドSUGOなど日本各地の名門サーキットを巡る全8戦で構成される。中でも大きな注目を集めているのが、12年ぶりに復活するマレーシア・セパンでの海外戦だ。シリーズの国際的な魅力を再び世界に示すチャンスであり、ナイトレース開催の可能性も囁かれている。

そんな2025年シーズンを前に、恒例となっている2回の公式テストが行われた。新体制やマシン、カラーリングの“お披露目”としてだけでなく、戦力の行方を占う大事な走行機会である。ルーキードライバーの評価やセーフティカー対応訓練なども実施され、開幕に向けての総仕上げとも言える場だ。

第1回目の公式テストは、3月12〜13日に岡山国際サーキットで開催された。ところが、初日からみぞれ混じりの悪天候。2日間ともドライコンディションはほとんど得られず、各車とも本格的なロングランは難しい状況だった。そんな中でGT500は38号車KeePer CERUMO GR Supraが、GT300は前年王者の0号車VENTENY Lamborghini GT3が総合トップタイムを記録。限られた条件下で存在感を示した。

第2回テストは、3月29〜30日に富士スピードウェイで実施された。ここではシーズン中に2戦が予定されており、各チームにとって重要なデータ収集の場となる。初日は朝から激しい雨が降り続き、路面は終日ヘビーウエット。リスク回避のために走行を控えるチームも目立った。

一方で2日目は、朝こそ陽射しがあったものの、厚い雲に覆われた空の下、午前は一部にウエットパッチが残るコンディション。しかし午後にはようやくドライが回復し、ここで各陣営が本格的なタイムアタックやテストメニューを消化。SC訓練やFCYテストも併せて実施された。

2日間で4セッションが行われた富士テストでは、GT500が1号車au TOM’S GR Supra、GT300は再び0号車VENTENY Lamborghini GT3が総合トップを記録。両クラスとも、前年王者が実力を見せつける格好となった。

とはいえ、両カテゴリーともタイム差は極めて僅差であり、今季も例年以上の混戦が予想される。テストで各陣営が取り組んでいたプログラムはまちまちであり、現時点ではまだ“本当の力関係”は見えてこない。真の姿が明らかになるのは、岡山で迎える開幕戦である。

2度のテストを経て、戦いの舞台はついに整った。4月12〜13日に岡山で開催される「2025 AUTOBACS SUPER GT Round1 OKAYAMA GT 300km RACE」。王者がそのまま突き進むのか。それとも挑戦者が牙を剥くのか。初陣から目が離せない。

写真=南 博幸/鈴木華子 文=三家香奈子

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