ディテーリングのプロに聞く、洗車と保管のヒント。
フェラーリのような特別な車は、単なる移動手段ではなく、歴史や技術、情熱の結晶である。その価値を維持し、美しさを保つために、洗車・保管にも注意を払いたい。そこで、ディテーリングのプロフェッショナルである「千葉ガレージ」の代表、千葉邦彦さんに今日からできる洗車・保管術について伺った。
屋内保管でも紫外線や、ホコリの影響を最小限に。
編集部:お忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございます。今日は、ずばりフェラーリの洗車・保管について伺いたく、お邪魔しました。よろしくお願いします。
千葉ガレージ代表 千葉邦彦(以下、千葉):よろしくお願いします。フェラーリだけでなく他の車にお乗りの方にも参考にしてもらえたらと思います。
編集部:フェラーリといえば、人気のカラーはやはり「赤」ですよね。一般的に、赤を綺麗に保つためには、紫外線を当てないことが大切だと聞きます。
千葉:そうですね。まず、屋内保管が基本です。塗料の種類や時代背景には関係なく、赤という色自体が紫外線に対して弱いんです。それから、ガレージの中でも油断は禁物です。蛍光灯やLEDライトでも、長時間当てると塗装が傷んでしまうんです。
編集部:地下駐車場なら窓もないので、よいかと思ったのですが。そうでもないんですね。
千葉:弊社が保管に使っている地下駐車場は理想的な条件がそろっています。本当に傷みにくいんですよ。
編集部:どんな環境なんですか?
千葉:紫外線が少ないだけでなく、風も少ないので、ホコリが舞ってくることがないんです。
編集部:ボディにホコリが付着するのは汚れの原因になりますもんね。
千葉:そうなんです。ガレージでも出入りが激しいと、周囲に置いてある車から汚れが付着することがあるんですよ。
編集部:なるほど! 複数の車両が置かれる屋内駐車場なら、入り口からなるべく奥の方を借りるのがよいですね。
千葉:あとは、出入りが多い場所にフェラーリを保管するのはリスクが高いですから、出入りの少ない車で固めるといった工夫が考えられますね。
美観を維持するために大切なのは、物理的接触を避けること。
編集部:とはいえ、やっぱり外に出して乗りたいですよね。そんなときはどんなことを心がけたらいいですか?
千葉:そうですね〜窓を拭くことですね。一般のユーザーさんでもできる簡単なケアですが、これを大事にするだけでも美観の維持につながります。
編集部:窓だけですか!?
千葉:そうです! 車を綺麗に保つには「紫外線を避ける」のはもちろん、なにより「触らない」「物理的接触を最小限におさえる」。この3つを意識するだけで美観の維持につながります。
編集部:えええ! 触らない!?
千葉:自己流のケアが意外とボディを傷つけてしまうんですよ。
編集部:洗車があまり上手でないとシミができてしまうというのは、よく聞きます。ボディに載ったホコリを払うのもダメですか?
千葉:たとえ柔らかい布で拭こうと、ボディに乗ったホコリや汚れによって、やすりがけのようにダメージになることもあるんです。
編集部:自分では綺麗にしたつもりが、ボディを傷つけてしまっているかもしれないと……。
千葉:つまり、塗装表面に物理的に接触する機会を減らすことで、塗装にダメージを与えるリスクが少なくなり、結果的に長持ちするんです。
編集部:なるほど。雨の日には乗らないことが一番良いですが、それでも雨に降られてしまったら、さすがに洗車をしないというわけにはいきませんよね?
千葉:そういうときは、水でサッと流して、優しく表面を拭き上げるだけでOKです。
編集部:え、それだけですか?
千葉:そうです。拭く時は、往復させずに布を一方向に動かして、水分だけを吸い取るように拭くのがベストです。ゴシゴシ拭いてはいけません。
編集部:傷がつくのは怖いですが、雨水が残ったままが一番ダメですか?
千葉:そうですね。雨染み防止についてよく聞かれるんですが、「雨が降るから洗車しない」が一番ダメなんですよ。
編集部:雨が降ったあとに洗車しようと思いますね。
千葉:そう。みなさん、雨が降った後に洗車しますよね。その時はきれいになりますが、晴れている間に屋外に放置すると、不純物が積もるんです。そうすると、次に雨が降ると、その不純物が雨水と一緒に塗膜の中に入り込んでしまうんです。結果として、シミができてしまうんですよ。
編集部:では、雨が降る前に洗車しなくてはいけないと?
千葉:そうですね。そもそも、ボディをゴシゴシと拭かずに済む状態にしておけばよいです。
編集部:そのためのワックスやコーティングというわけですね。
千葉:例えば、当店で施工しているコーティングは、エアブローでかなり水滴を飛ばせますから、ボディに直接触れて拭くのは最小限で済みます。ワックスも、正しく使えばボディを保護する役割を果たしてくれます。
編集部:なるほど。コーティングをすれば汚れないと考えている人も多いかと思いますが、実際には汚れが落ちやすい状態にしておくものなんですね。
千葉:そうなんです! コーティングを含めディテーリングを「美観を維持するもの」と捉えているお客様も多いのが実状です。
編集部:車が持っている本来の美しさを復活させることはできても、それを維持できるかどうかはオーナーさん次第の部分があるわけですね。
千葉:まさしくその通りです。
編集部:フェラーリのような頻繁に乗るような車じゃないなら、こだわりの洗車道具をそろえてこまめに洗車するよりもディテーリングにコストをかけて、保管方法に気を遣ったほうが費用対効果が高いのかも知れません。一方で大切な愛車だからこそ、自分の手で綺麗にしたいという気持ちも理解できます。
千葉:プロの目線で言わせていただければ、「ちゃんとコーティングをして、ボディにはできるだけ触らないでほしい」というのが本音です(笑)
写真=中島仁菜 文=編集部 取材協力=千葉ガレージ 03-5913-7170 https://chibagarage.jimdofree.com