BBS FORTEGA × BMW iX3|BEV時代に愉悦する最新技術にして出発点。

ピットロードを出て軽い段差を乗り越えコースインする。軽い―。スロットルを踏み込み、BEVならではの強烈な加速感を感じながら、軽い舵角をあてて縁石を乗り超える。相当に軽い―。クルマがぐいぐいと前に進んでいく感覚もある。サイズ設定を含めてホイールが変われば、運動性能に影響を及ぼすことは理解しているものの、慣れないクルマとコースでここまで如実に違いが伝わることに驚く。

 BBSジャパンが構想から3年もの歳月をかけたアルミニウム合金の新素材「FORTEGA(フォルテガ)」がいよいよ走り出した。2023年初頭に概念を初公開した彼らが、今回、メディアや販売店向けの試乗会を実施したのだ。高低差がある22ものコーナーで構成される、クルマにとって厳しい条件の重なるMAGARIGAWA CLUBのコースを走らせることで、その性能を浮き彫りにする。彼らはケーススタディとしてBMW iX3を用意し「純正ホイールとフォルテガホイールを乗り比べる」という我々にとって貴重な体験を提供してくれた。冒頭の印象は、純正ホイールから乗り換えたときの初発の印象である。

 試乗車がiX3なのには理由がある。フォルテガは重量化が著しいBEVなどを見据えたからだ。「2トンを軽く超え、ときに3トン近くまで重くなるBEVに対して、安全性、信頼耐久性を充分以上に満足させたまま“クルマを楽しく走らせる”ことを追求した結果、フォルテガが必要不可欠と判断した」と、開発本部長を務める村上貴志氏はいう。あらゆるカテゴリーで求められる高剛性、高強度、そして軽量性といった要求性能を踏まえてBBSジャパンは、アルミ鍛造、超超ジュラルミン鍛造、マグネシウム鍛造という3本柱で応えてきたが、晴れて4本目の柱が立ったというわけである。

 今回、純正ホイール(Mスポーツ)は、F:8.0J、R:9.5Jの20インチで、タイヤサイズはそれぞれ245/45、275/40となる。それに対してフォルテガはF:9.0J、R:10.0Jの21インチ。それぞれ245/40、275/35となる。タイヤ幅はほぼ同一で1インチアップした状態であり、これなら誰もが気兼ねなく履ける。タイヤ銘柄は両車ともアドバン・スポーツV107で統一した。インチアップすればホイールは重くなる方向なのに、今回の例でいえば1本あたり6㎏近く軽く仕上がったという。つまり1台で約24㎏。試作品かつタイヤ込みの数値なので厳密ではないものの、冒頭の印象は数値的性能でも裏付けられていた。

 それぞれコースを2周し、よりその“性能差”を感じ取っていく。重量差に加えてインチアップした影響も大きいのか、ステアリングに対する応答がより俊敏になったようだ。とはいえ危なっかしいものではない。軽快な印象のなかにも粘りのあるグリップ感を感じる。これらの相乗効果で意のままに操れる感覚が際立ち、クルマが一段とスポーティになったようだ。フォルテガはBBSジャパンが持つ4本柱のなかでも、もっとも剛性値を出しやすいという。剛性の高さがタイヤにイイ仕事をさせているのか。コースだけでなくストリートも含めてよりじっくり乗り倒せば、別の側面も見えてきそうで、期待に胸が膨らんだ。

  「これは私たちにとってゴールではありません。いま、ようやくスタートラインに立ったところです」と、先の村上氏に加えて代表取締役社長を務める新田孝之氏も口をそろえていたのが印象的だ。まだ誰も使っていない素材を研究開発してホイールとして実用化させる。それをもって高重量化が著しいBEVの走行性能やライドフィールの向上を目指す。その挑戦はまだ始まったばかりであり、彼らの技術的追求は尽きることがない。来年初頭には発売について正式発表するほか、今後はより重量級への対応、かつ大径サイズへの展開を見据えて、研究開発を進めているという。彼らの弛まぬ努力によって、BEVの世界に新しい風が吹き始めていることを実感した。

写真=小林邦寿 文=中三川大地 問い合わせ=BBSジャパン 03-6402-4090 https://bbs-japan.co.jp

初出:『MOTORIST vol.3』(2024年12月16日発売)
※内容は発売当時のものです。掲載にあたり一部加筆修正をおこなっています。

MAGARIGAWA CLUBで開催されたメディア向け試乗会にて、ノーマルホイールを装着したiX3と、BBS FORTEGAを装着したiX3とで比較を行った。

BMW iX3に装着したフォルテガ試作ホイール。「forte(強い)+lega(合金)」を組み合わせた造語だという。その言葉が示す通り高い剛性値を出すことのできる新素材技術だ。

クロススポークを始め、理想的な駄肉処理などBBSならではの技術が詰め込まれている。

開発を担当した村上貴志氏は「これをスタートラインとして、まだ面白そうなこと、やりたいことがたくさんある」と笑みを浮かべた。今後がとても楽しみである。

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